日本の風物詩とも言える音に苦情が寄せられ、行事の中止や方法の変更を余儀なくされるケースが相次いでいる。東京都のある寺は今年、31日の除夜の鐘を中止する。毎月2回、早朝についてきた鐘の音が「うるさい」と、警察に苦情が寄せられたことがきっかけだった。一年を締めくくる百八つの鐘は騒音なのか。
「除夜の鐘中止のお知らせ」。師走を迎えた東京郊外の寺の入り口に、そんな書き出しの一枚の紙が張り出されていた。「お知らせ」によると、苦情があったのは今年5月。所轄の警察署から連絡が来た。寺では毎月1日と15日の朝5時に鐘をついてきたが、回数を減らすことにした。
だが半年後の11月、いつものように鐘をついた数時間後、墓地にあった手おけ30個が全て燃える不審火が起きた。警察によると、苦情との因果関係は不明という。寺は朝の鐘つきをやめ、除夜の鐘も中止を決めた。
騒音問題総合研究所(青森県八戸市)代表の橋本典久・八戸工業大名誉教授は「以前は自分の心理状態が悪い時に音をうるさいと感じる煩音(はんおん)が問題になったが、最近は自分の境遇に対する不満などから、どんな音も認めない『不寛容騒音』の問題が増えている」と指摘する。
苦情を公的機関に訴えるケースも目立つが「直接話し合うのは面倒くさいからと、一方的に言いたいことを言える場所を選ぶ傾向がある」という。「相手が分かればまずはコミュニケーションをとり、良い人間関係を築いていくことが解決の基本になる」と話す。
毎日新聞
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