※PRESIDENT Online
■突然、部長に呼び出され部署異動を命じられる
なぜ、この俺が出世コースから外れなきゃならないんだ――。
大手メーカーで入社以来、営業畑を歩んできた荒井拓真あらいたくまさん(仮名、当時38歳)は2021年春、総務部庶務課への人事異動の内々示を受けて唖然あぜんとし、思わずそう心の中で叫んだ。
人事異動の内示を数日後に控えたある日、所属部の男性部長から不意に呼び出された。細長い会議室の出入り口から最も遠い隅で、長テーブルの対角線上に2人は向かい合った。「君、総務部庶務課に行ってもらうことになったから。それほど重要な引き継ぎはないと思うが、まあ、後の者が困らないように頼むよ。じゃあ」「ちょ、ちょっと待ってください。理由を教えてください。その左遷、される……」
「おいおい、『左遷』なんて、君、人聞きの悪いこと言ってもらったら困るよ! 理由は、自分の胸に手をあてて考えてみてよ。わかるでしょ。人事考課があれほどガタ落ちしちゃ、残念だけど、営業ではもう面倒みきれないのよ。新天地で頑張ってくれ。じゃあな」
部長は言い終えて会議室を出ていこうとして立ち止まり、顔だけ振り向き、こう言い放った。それまでの口調とは打って変わり、ドスのきいた声だった。
「おい、お前、パワハラだなんて言い出すんじゃないぞ。異動にはちゃんとした理由があって、客観的証拠もあるんだからな」
「育休を取ったことによる多少のハンデは織り込み済みでしたが、まさか左遷されるとは……。あの時、部長が言ったように、人事考課が急落したという客観的証拠はあるんです。でも、それも僕を左遷するために、用意周到に仕組まれた罠ですよ。男が育休を取ったらこうなるという、見せしめ以外の何ものでもありません。」
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