なぜシャトレーゼが「一人勝ち」するのか
以上のように苦しむ洋菓子チェーンが多い一方、シャトレーゼは全国で店舗数を増やすなど快進撃が続いた。20年3月末から23年3月末までの国内店舗数は540→582→640→740と3年間で200店舗を増やし、1月には国内外で1000店舗を達成した。
ちなみにシャトレーゼでは国内店舗のおよそ9割がフランチャイズ店であり、ロイヤリティを取らずに工場から店舗への卸売を本部の収入とする仕組みを取っている。工場は北海道から九州まで全国に10拠点を構える。フランチャイズ主体の経営で、ロイヤリティではなく主に工場からの卸売でもうけるのはコメダ珈琲店と似たシステムだ。
規模拡大は売り上げにも影響を与えている。シャトレーゼホールディングスの売上高を見ると、コロナ前の19年3月期は662億円だったのに対して最新の23年3月期は1327億円まで伸びており、コロナ禍での成長が著しいことが分かるだろう。
不調の不二家・銀座コージーコーナーと、快進撃のシャトレーゼ。両者の大きな違いの一つが店舗立地だ。前者が駅前や都市部の繁華街に路面店を構えるのに対し、シャトレーゼは主に郊外のロードサイドに展開している。シャトレーゼが駅前商店街に出店する場合でも、比較的街の外れに出店する場合が多い。
こうした立地の違いから、シャトレーゼは他チェーンより「目的買い」客の比率が高いと考えられる。対して駅前・繁華街に店舗を構える他チェーンは、たまたま店舗を見かけた客が甘いもの欲しさに訪れる、つまり「衝動買い客」の比率が高いのではないだろうか。駅前にはコンビニやスーパーなどが多く、不二家や銀座コージーコーナーはコンビニスイーツなどの脅威にさらされて業績が悪化したと筆者は考えている。
そして、シャトレーゼが目的買い客、つまり「ファン」を集めた最大の理由は安さにあるだろう。ケーキ1切れの価格帯はおおよそ300~400円台であり、不二家や銀座コージーコーナーよりも安い。価格の分、質感には差が感じられるが、消費者にとって安さは大きなメリットになるはずだ。
ホールケーキも5・6号サイズで2000~3000円台と低価格帯だ。1本64円の「チョコバッキ― バニラ」、1個129円の「ダブルシュークリーム」などケーキ以外の商品も安い。ちなみにシャトレーゼの全商品数は400ほどあり、和菓子やパンなども販売しており、豊富な品ぞろえも魅力の一つになっている。ネットのレビューを見ても、品ぞろえを評価する声は多く「ついつい多く買ってしまった」などの意見もあり、広い郊外店を主力とするシャトレーゼだからこそ可能な施策として売り上げの向上につながっているようだ。
産経新聞
https://www.sankei.com/article/20240303-TT77IOAAFZPBHKVVNCEO73OH34/2/