日本のドル建て名目GDPは2021年から2022年にかけて一段切り下がっています。言うまでもなく歴史的な円安の結果であり、日独逆転は為替変動を受けた価格効果の帰結とも言えます。過去10年を振り返っても、日独GDPの差が極端に拡大した時期(2012年前後)では円相場が史上最高値を付けていました。ドル建てGDPは多分に為替変動の影響を受けます。
こうした過去の経緯を踏まえ、今回の逆転はあくまで市況の乱高下を受けた一過性のスナップショットと考える向きもあるかもしれません。そういった主張もある程度は理解できます。2012年時点のドル建て名目GDPに関して言えば、日本はドイツよりも8割弱も大きいものでした。それが10年余りで追いつかれ、逆転されるに至ったのです。2012年時点でこの展開を予測できた者はごく少数です。同じこと(再逆転)が今後10年で起きるという主張も一蹴できるものではないはずです。
人口半分の国に抜かれるという屈辱
しかし、「一過性のスナップショット」だったとしても十分大きな出来事ではあります。2010年には日本が中国に抜かれて世界第3位の経済大国に転落するということが話題になりましたが、中国に抜かれるのとドイツに抜かれるのでは意味が全く異なりま。
経済成長の源泉は①労働力、②資本、③全要素生産性(TFP)です。③が容易に変わらない以上、①と②で成長率格差は規定されやすく、人口で圧倒的に勝る国に抜かれること自体、「来るべき時が来た」という側面もあるわけです。この点、日本の人口は1億2462万人であるの対し、中国は14億1140万人、米国は3億3514万人と日本より経済規模の大きな国は人口規模も遥かに大きい国です(人口は2023年10月のWEOで使用されている前提と同じもの)。これがそのまま①労働力の格差になるのですから、名目GDPの規模で競うこと自体、中国や米国に勝つのはそもそも難しいことです。
しかし、ドイツの人口は8389万人であり、日本の7割弱にとどまります。それほどの人口差を持ちながら経済規模で抜かれてしまうという事実は相応にショッキングではあります。上述の①~③で言えば、近年の日本は①の縮小が低迷の主因と指摘されてきました。それでも人口が多い分、①で優位にあるはずの日本がドイツに抜かれてしまったということはやはり②や③の劣化が著しいという可能性を示唆します。
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