イスラエル軍が、パレスチナ自治区ガザ地区北部の住民110万人に24時間以内に退避勧告したことを受け、ガザの人道状況の悪化を懸念する国連高官や関連機関からは「死刑宣告に等しい」などと撤回を促す声が一斉に広がった。一方、イスラエルのエルダン国連大使は、国連側による批判を「ばかげている」と一蹴。「国連はイスラエルの自衛を望んでいないことが明らかになった」と反論した。
「ガザの人々をさらに奈落の底に突き落とすだけだ」。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のラザリーニ事務局長は、退避勧告を受けた13日の声明で指摘した。国連によると、イスラエル軍による攻撃が続くガザでは42万3000人以上が避難を余儀なくされている。ラザリーニ氏はガザの状況を「地獄と化し、崩壊の瀬戸際にある」と強調。すべての当事者に国際人道法の順守を訴え、民間人の保護を最優先にするよう呼びかけた。
世界保健機関(WHO)の報道官も同日、ガザで人工呼吸器を使用する重病者や新生児などに移動を強いることは「死刑宣告」だと指摘し、勧告の撤回を求めた。WHOによれば、イスラエル軍の攻撃が続くガザの医療施設の受け入れ能力は「限界点」に達しているという。このため、WHOは、病人や負傷者を避難させたり、水や食料を届けたりするための人道回廊の設置を呼びかけている。
一方、イスラエルのエルダン国連大使は同日、ニューヨークの国連本部で行われた会合で、退避勧告は民間人の被害を軽減するための措置で、ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの掃討が目的だと主張。「国連は何年もの間、テロ行為を強化するガザから目を背けてきた」と批判の矛先を国連に向け、「テロ集団がガザで起こる全てのことの責任を負う」と述べた。
毎日新聞
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